■不動産鑑定とはどういうもので、どのようにして行われるものなのでしょうか。
定義としては、不動産鑑定士によってなされる、土地・建物等の経済的価値を貨幣額によって示されたものです。また、不動産鑑定士の名称を用いる限りは、「不動産の鑑定評価に関する法律」の規制を受けこれに基づく、「不動産鑑定評価基準」にしたがった表示項目を記載し、適正な評価手続き、評価手法により作成されたものでなければなりません。それに適合する限りにおいて、「法」は業務の独占を認め不動産鑑定士以外が評価業務を行うことを禁止しています。ただし農地等の適用除外(法52条)を認めています。※
※業務独占の除外項目
1.農地、採草放牧地又は森林の取引価格(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引に係るものを除く。)を評価するとき。
2.損害保険の目的である建物の保険価額又は損害填補額を算定するとき。
3.建築士法(昭和25年法律第202号)による建築士事務所(木造建築士事務所を除く。)の業務として、建物につき鑑定するとき。
※ 「不動産の鑑定評価に関する法律」においての「不動産の鑑定評価」の定義は、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利をいう。以下同じ。)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することとされる。
■鑑定評価の基本的な考え方
では、どういう考え方で経済的価値を求めるのでしょうか。つまり「価格」とは何かを考えなければなりません。
(1)価値の源泉
鑑定理論においては、不動産の経済価値の源泉を、
1.その不動産に対して、われわれが認める効用
2.その不動産の相対的稀少性
3.その不動産に対する有効需要の存在
この三者の相関結合によって生じると規定されます。これについては、しごく経済的常識に基づいた考え方で あると、ここではしておきます。ただし、あくまで貨幣額で表示したものでなければなりません。
(2)価格の三面性
その価格を実際に求める方法、つまり鑑定評価の方式においては、価格は三つの方向からのアプローチで求めることになっています。
第一が、原価方式であり、それにどのくらいの費用がかけられているのか(費用性)に着目するものです。コストからのアプローチであり、これによって得られた結果(試算価格)を積算価格と呼びます。
第二が、比較方式であり、それがどれほどの価格で市場で取引されているか(市場性)に着目するものです。マーケットからのアプローチであり、これによって得られた結果(試算価格)を比準価格と呼びます。
第三が、収益方式であり、それを利用することによってどれほどの収益(便益)が得られるか(収益性)に着目するものです。収益性からのアプローチであり、これによって得られた結果(試算価格)を収益価格と呼びます。
それぞれの方式にはそれに応じた適用方法が定められていますが、対象とするものによってはすべての方式を用いることができず、1つもしくは2つの試算価格から鑑定評価額を決定することが多く、また試算価格が必ず一致するものではありません。不動産鑑定士は、対象不動産のあり様(種別と類型)に応じて、適用する方式を選択し、算定した試算価格を調整して最終の鑑定評価額を決定しなければなりません。この調整は各試算価格の特性を踏まえ、鑑定評価の全手順を検証しながら、1件ごとの対象不動産に応じた価格形成要因の分析、不動産の価格に関する諸原則、その他を総合的に考量して行うものです。
■鑑定評価は社会科学であり、総合技術でもある。
不動産の鑑定評価は、多くの価格形成要因を総合して価格を判定するもので、与えられたデータから一義的に答えを求めるものではありません。したがって、鑑定士の経験、能力等によって同じ対象不動産に対して異なる価格が出される場合があります。もっとも依頼者の都合に過度に合わせるような真似のないよう、また専門家としての注意義務を果たすことを確保するため、「不動産鑑定評価基準」に従い行われねばならず、地価公示等の公的評価とかけ離れた結果が出ないようにされ、不当鑑定に対しての処分制度が設けられています。しかしながら大量の地点を広域で一斉に鑑定を行う必要がある場合には、複数の不動産鑑定士が共同で作業を進め、情報を共有、議論検討の結果、目線を合わせて多数地点で判断基準を合わせ整合性の取れた価格群を決定することもあります。地価公示、地価調査、相続税鑑定、固定資産評価替等の公的評価等がこれにあたります。
このため鑑定評価は社会科学に属すると言え、データ処理や統計、収益の把握等で数理統計技術を用いるものの無数とも言える価格形成要因を総合して判断し、最後に数値に変換するという「跳躍」が必要となり、経験とともに、多くのそして新しい分野への関心を持ち、研究し、採り入れていくという積極性が資質として求められているのです。土壌汚染、アスベスト、耐震強度と常に新しい問題が社会には起こってきます。証券化、国際化の広がりや収益還元法の精緻化、減損会計の導入など、鑑定手法はもとより法規制、経済制度も変わっていきます。常に学んでいく姿勢がないとついていけないのです。
そんな背景もあって、不動産鑑定士の経歴は多様であり、法律、経済系がやや多いとは言え、税理士、公認会計士、建築士等を兼務する者も多いのです。
(続く 補完予定)
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